僕はよく「A型でしょ」って言われる。
神経質というか、きっちりしてるように見えるからだろうか。
まあ、そこそこ神経質である。そこそこきっちりしているよ。
先週の出張も、前から話題のローコストキャリアをフル活用し、2週間前には飛行機のチケットを押さえてスケジュールを逆算出来るように準備。
【大阪→福岡(1泊)→東京(3泊)→大阪】 の道程で、どのタイミングで誰と打ち合わせするかとか、観劇の予定をどこに入れるか、とか、曖昧な約束に対して空けられる時間帯も複数用意しながら、その約束がFIXされた後の空いてしまった時間帯の埋め方とかもある程度目処をつけておいたり。
おかげで出張時の予定はキツキツになることも多いのだけど、僕の中では「交通費に対して会える人の数」がコストパフォーマンスの値になるのだ。
書けば書くほど僕のA型気質が伺えるでしょう。
で、前回のブログで振っている、僕が空港でやらかした件なのだけど。
例のLCCの代表格とも言える、桃の飛行機で関空から福岡へ入る予定を立てた僕。
何せ、大阪ー福岡間5,500円だ。
フェリーの価格と一緒という。
その代わり、出発便は早い。
早朝5時台の関空行きのバスに乗って行く。
搭乗手続き締め切り15分前に着いて、桃の受付窓口を目指し、機械に予約表のバーコードをかざす。
と、「予約番号が無い」という旨のメッセージが出る。
そんなはずはない。
こちとらA型気質できちんと予約済みだ。
何回かチャレンジするも同じ結果。係員がやってくる。
「どうされましたか?」
「はは、プリントアウトしたときの汚れですかね?バーコードが読み取れなくて」
「では、こちらの窓口で」
と、係の人に予約表を渡すやいなや、
「お客様、予約の日時が明日になってますね」
「え嘘」
僕は、24日の飛行機を取ったつもりが、25日の飛行機を予約していたようだ。
係員の対応がえらく冷静だったので、そのときは大したことはないだろうと思って、そのまま案内された窓口へ向かう。
窓口でも同様に、「ああ、明日の便ですね」と言われ、
「振り替えてもらうことって...」
「席は空いてますんで、取り直してもらうことになりますが」
「それって料金は」
「新規でご購入いただくことになります」
「ああ...。それは、えっと、5千円台でいけるんですかね...」
「少々お待ちください。(パソコンいじる)...本日のご手配ですと、手数料併せて18,000円になりますね」
「え...」
「どういたしますか?」
「同じ便に乗ろうと思ったら、それ以外方法無いんですよね」
「ですね」
「他の可能性は?」
「他社様の価格設定は分かりませんが...」
「でも、5千円台ってことはないですよね」
「他社様については...(分かりませんの意)」
「...ああ、なんてことだ(劇的に呟く)」
「あの、お客様、搭乗手続き締め切りまで5分を切っておりますが、どういたしましょう」
「あの...(力なく)はい... 乗ります。取ってください」
窓口の人は、よくあることなのか、とてもスムーズにスピーディに対応する。
僕の感情はその手際良さに追いつけないが、ここで躊躇したら福岡での予定や東京での予定が総崩れする。嗚呼、キツキツで埋めたスケジュールよ!
福岡で会う予定の方々に連絡して明日にしてもらおうかと考えたりもしたけど、まだ午前7時前。連絡の取りようもない。
流石に落ち込んでいる僕に、窓口の人から声が掛けられた。
「お席は窓際か通路側か、どちらがご希望ですか?」
ほっほー。今の僕にそんな質問を...。しかし、僕は咄嗟に返した。
「飛行機の中ではずっと頭抱えてると思うんで、どちらでも大丈夫ですよ」
決まった。一世一代のジョーク。この状況で、ジョークをかます。わずか4分でジョークにもっていける自分のハートの強さに気づいた。
「かしこまりました。では窓際でお取りします」
窓口の人は顔色ひとつ変えずに返してきた。
「おーい!」
は、心の声。まあ、さほど気の利いたジョークではないだろうけど、察してくれよ。
事務処理はドシドシ進み、僕には新たな航空チケットが渡された。
気になることを一応聞いてみる。
「あの、取り間違えた明日のチケットって、誰か他の人が使えたりするん(ですか?)」
のケツを食われ、
「申し訳ございません。ご本人様しか使用できません。お客様、出発時刻が間もなくですので手荷物検査の方に」
「ですよね」
と、急き立てられる始末。僕は係の人と一緒に小走りで手荷物検査場へ向かうのであった。
で、まあ、無事に(全然無事じゃないけど)予定の飛行機に乗れたというお話し。
でもさ。ものの5分でこのエピソードをオイシイかもしれないと思えるところまで消化できた自分に、幾ばくか人間的成長を感じることができたということが、僕は重要だと思っているの。
この話を使って福岡でも話題の糸口にしたり、サキトサンズ出陣式でネタにしてみたり、受けたかどうかは別にして、この出来事の対価を得ようとする貪欲さとか。
そんな僕の血液型は、O型なんですよ。
さて。
本日は劇団ひまわり18期研究科卒業公演の初日。
売込隊ビームが2008年にメイシアターさんのshow劇場シリーズでやったシェイクスピア原作の「お気に召すまま」を上演する。
「お気に召すまま」の稽古がスタートした頃、まだ「紛れて...」も「庭」も「人の気も知らないで」も動き出していなかった。今、既に2本が終わっている。新作台本も大小2本書き上げた。
そう考えると、「お気に召すまま」に掛けている時間の長さと言ったらない。
正直言えば、そのくらい時間が必要なメンバーでもある。何せ「研究科」だ。演劇に関することを色々と研究しながら進めてきたということだ。
僕は劇作家であり演出家だけど、どちらかと言えば前者の肩書きで演劇に関わることが多い。
しかし、研究科では、後者の能力を問われる。
僕も僕自身の演劇観を研究しながら取り組んできたかもしれない、って今になって思う。
シェイクスピアは偉大な劇作家であり、俳優でもあった。
400年前のことだから分からないけど、俳優としてのシェイクスピアの人気もすごかったという話がある(彼については諸説あるので、今は都合の良い部分だけ使って書いてます)。
俳優はいつも前のめりだ(これは持論)。
俳優が書いた〝本〟への取り組みは、ある程度の冷静さと客観性が必要だ(これも持論)。
それを劇作業を大事にしている「兼演出家」の僕が研究しながら取り組んだ数ヶ月。
自分で脚色しておきながら、自分が演出家として大事にしている「メッセージとメタメッセージのバランス」がほとんど使えない台本への取り組み。
ここ数日肩に乗ってる重たいナニかは、たくさんの舞台を並行してしまったツケだと思っていたけど、実は「お気に召すまま」との格闘によるものだったかもしれない。
それが、昨晩ゲネプロを観て、ようやく解き放たれた気がしている。
水準の高いビームの役者陣と関西の名だたる俳優さん、一線のスタッフ陣で上演した4年前の「お気に召すまま」とはまったく違う作品になったけど、すごい〝剥き身〟の「お気に召すまま」が生まれた。(誤解されそうだけど、今回のスタッフ陣だって一線の方々です、念のため)
残席状況は分かりませんが、興味のある方は問い合わせてみてください。
ウィングフィールで日曜日まで。