August 25, 2013
人の気も知らないで戯曲賞選評(抜粋)
ディレクターの森さんも公表されているものですから...と言って許可をくれたので、せんだい短編戯曲賞の選評より、「人の気も知らないで」に関する部分だけ抜粋して掲載させていただきます。公演の宣伝になればと。
講評員は、日本各地で演劇の制作やプロデューサーとして活躍されている5名の方です。

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小室明子さん(札幌・NPO法人コンカリーニョ)
横山さんの「人の気も知らないで」。最終選考に残った11作品の中でもっとも巧みな脚本だったと思います。意見が割れまくった審査の中で、この作品のみが否定する意見がほとんどなかったと記憶しています。ワンシチュエーションで登場人物が3人のみですが、話題があちこちに飛んでいくのがなんとも女の人の会話っぽく、その積み重ねから人物像が徐々に形作られていきます。大阪弁と"大阪女"のイメージみたいなものも効果的に使われていて、時折痛みも感じつつ、とにかく楽しく読みました。

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岡田康之さん(新潟・りゅーとぴあ)
横山拓也さんの「人の気も知らないで」は、気がつけば最後のページを読んでいる自分がいました。いかに短編戯曲とはいえ、これはなかなかできない体験です。セリフの説得力や構成力から、作者の安定した筆力を感じる完成度の高い作品であったと思います。横山さんの別の作品もぜひ拝見したくなりました。

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木元太郎さん(東京・こまばアゴラ劇場、アトリエ春風舎)
『人の気も知らないで』は直接震災を取り上げてはいませんが、「自身が抱える傷の大きさ」や「人が抱える傷との距離」について、それぞれ違いがあるということを認識し合う難しさが描かれており、「2011年3月11日以降に書かれた戯曲」という意味でも受賞作に相応しいと思いました。こういったワンシチュエーションの作品が少なかったのは個人的に意外だったのですが、台詞によって人間関係を展開させていくという点でも、優れた手腕を感じさせる作品でした。

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平松隆之さん(名古屋・うりんこ劇場)
最終候補作品の中で横山氏の作品は短編ならではの小気味よさ、スピード感、爽快感が抜きに出ていた。綾門作品はまるで現代アートのような、まだ評価の定まらない居心地の悪さと大きな可能性を併せ持った魅力をかもし出し、この二人が受賞をきっかけに何かしら仙台/社会と繋がりを持って行くことに素直な期待感を抱いている。

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相内唯史さん(大阪・インディペンデントシアター)
大賞を受賞した横山拓也氏「人の気も知らないで」は、作者の社会的な眼差しと問題意識が、関西弁の柔らかい部分と鋭い部分に乗せられて、観客に届けられる作品。この関西弁である事のプラスマイナスと、実は上演も観ているため、個人的には戯曲のみでの判断かどうかと心悩ませる部分もあったが、他の選考委員の方々の作品への言葉も受けて、自信を持って大賞に推すことができた。


diary |  23:15 PM