May 27, 2013
サキトサンズのこと。
サキトサンズ「梨の礫の梨」の全国武者修行ツアーがスタートして、来週の岸和田公演でちょうど1年になる。
これまで一緒に芝居を作ったことがなかった、宮川サキねえ、Sun!!ちゃんのお二人と、こんなに長く一つの作品と向き合い続けるとは誰が予想しただろう。
6月2日、岸和田公演初日に30ステージ目を迎えるという。

去年の大阪公演(@ムーブファクトリー)での初日のことを思い出す。
お客さんがこの芝居をどう観たらいいのか探りまくっていた。
だって、sundayの「宮川サキ」とミジンコターボの「Sun!!」が二人芝居やるっていうんだから、関西のお客さんだったら賑やかで楽しいお芝居が観れるって思いますよ。
僕だってそう思う。作演も売込隊ビームの横山だし、きっとコメディだろうって想像する。

台本の仕上がりが遅かったこともあって、稽古は綱渡りで進んだ。
稽古最終日まで本番のイメージを掴めないまま初日を迎えたような気がする。
概ね僕の芝居って初日の感じがイメージできないことが多い。
「エダニク」初演のときもそうだったし、「目頭を押さえた」のときも役者が全員不安そうだった。
「梨の礫の梨」も例外ではなかった。
初日。水を打ったように静まり返っている客席に、演者の二人にしても、少なからず動揺があったと思う。
初日終わってからの飲み会の重苦しい空気は未だに僕の中でトラウマになっているくらい笑
大阪公演は約2週間のロングラン。
最初の週末までは不安定だったと思う。大阪公演の折り返しくらいで、ようやくこの芝居が観た人のどんな情感に響くのかが分かってきたような感じだった。
ああ見えてシャイなサキねえと、気遣いのかたまりのようなSunちゃんと、皮肉屋の僕が微妙な距離を保ちながらも、家族のように作品と付き合って行く。
大阪公演は最終的に良い評判をいただくことが出来て、この作品で全国を回ることも確認し合えた。

そして最初の遠征地は京都(@一坪シアタースワン)。京都では、深海を進むような息詰まる「梨の礫の梨」になった。

続いて東京(@下北沢「劇」小劇場)。大阪公演で成熟した頃に演出を戻しつつ、やや広い劇場空間を意識したアプローチ。一旦完成形を見た、と思ったけど、それは錯覚だった。まだまだこの芝居は進化する。

年が明けて九州ツアー。3日連続、移動&乗り打ちの過酷なツアー。福岡(@紺屋ギャラリー)では正直粗かった。お客さんが温かかったから綻びは隠されてしまったけど、僕はかなりイライラしながら観ていた。

そして熊本(@ギャラリーADO)。福岡のダメ出しがきつかったこともあってか、役者の集中力は相当高かった。会場が民家の2階で周囲の騒音がすごかったけど、僕はこのときの芝居の強度が今でも印象深い。

九州ツアー最終日は長崎(@宝町ポケットシアター)。ブラックボックスの小さい劇場だったので、芝居が濃密だった。途中、船の汽笛が遠くに聞こえてきて、異世界に連れて行かれた。

そして、今回の初夏ツアー。まずは北海道(@よりどこオノベカ)。お客さんと呼吸を調整し合うような、慎重な芝居運び。悪くない。1年近くやってくると、こうやって芝居が固まってくる。でも、この作品は芝居を固まらせたらダメなのだ。1ステしかないので、これで良かったと思うけど、「梨の礫の梨」は会場と一体になるところまで持っていきたい。

三重(@津あけぼの座)は劇場で3ステ。初日が出色の出来であったとTwitterで書いたくらい、僕は震えた。2ステ目は少しお客さんのノリが良過ぎて綱引きが難しかった印象、3ステ目は慎重さから京都公演の頃の深海へ向かいかけてしまう。それでも、この三重公演は、俳優二人にとっても僕にとっても「作品が愛されている」「作品を愛する」ことを再確認できた公演だったと思う。


各公演前に当然稽古があるんだけど、二人の台本がボロボロなのが泣ける。
僕の二転三転する演出が書き込まれた台本は、もう見直そうとしてもどれが最新の演出か本人以外は判断できない。
三重公演を観てくれた津あけぼの座の油田さんや、三重文化会館の松浦さんが、DVD(大阪公演収録)で観たときよりも、芝居のヌキが効いてて成熟してきている、ということを言ってくれて、そうか、これが1年間ひとつの作品に向き合ってきた成果か、と思った。

まだ過程だと思っているので、感傷的になるタイミングじゃないけれど、「1年」は僕ら的には節目であることは間違いない。
岸和田公演は、中崎町で観てくれたお客さんが比較的来やすい距離じゃないかと...
サキトサンズと一緒に1年の節目と、成長、修行の成果、みたいなものを共有しませんか?

※参考...「梨の礫の梨」感想まとめ
diary |  22:47 PM